冷徹ドクター 秘密の独占愛
え……?
跡継ぎの予定じゃ、ない?
「え、あの……それって」
何だか深く聞いてはいけない気がして、控え目に、尚且つ様子を窺いつつ、続きを気にする空気を醸し出す。
でも、市野さんは大したことではなさそうに続きを口にする。
「本当は、アイツの兄ちゃんがここを継ぐ予定だったんだよ。聞いてない?」
「え、はい。お兄さんが、いるんですか?」
「大学の時、亡くなったんだけどね。バイクの事故で」
「えっ……」
思いもよらぬ話の展開に、あからさまに動揺したリアクションを取ってしまっていた。
お兄さんがいたことも初耳だけど、それ以上に亡くなったという事実に驚きを隠せない。
「知らなかったか……誰かから聞いてるかと思ってた」
「いや、初耳です……そんなことが……」
「まぁ、アイツも色々あったからさ、院長とギスギスしてるのも、そういうのが原因っていうか」