冷徹ドクター 秘密の独占愛



え……?

跡継ぎの予定じゃ、ない?


「え、あの……それって」


何だか深く聞いてはいけない気がして、控え目に、尚且つ様子を窺いつつ、続きを気にする空気を醸し出す。

でも、市野さんは大したことではなさそうに続きを口にする。


「本当は、アイツの兄ちゃんがここを継ぐ予定だったんだよ。聞いてない?」

「え、はい。お兄さんが、いるんですか?」

「大学の時、亡くなったんだけどね。バイクの事故で」

「えっ……」


思いもよらぬ話の展開に、あからさまに動揺したリアクションを取ってしまっていた。

お兄さんがいたことも初耳だけど、それ以上に亡くなったという事実に驚きを隠せない。


「知らなかったか……誰かから聞いてるかと思ってた」

「いや、初耳です……そんなことが……」

「まぁ、アイツも色々あったからさ、院長とギスギスしてるのも、そういうのが原因っていうか」

< 103 / 278 >

この作品をシェア

pagetop