冷徹ドクター 秘密の独占愛
冷血Drの意外な一面
「きっ……キスされただとぉーっ?!」
「ちょっと、華世! 声でかいってば!」
椅子から立ち上がった華世は、酸欠の鯉みたいに口をパクパクさせて驚きを露わにする。
漫画のような驚き方をしたなと思っていると、一度落ち着くように息を吸い込んで腰を下ろし直した。
「大丈夫! 防音だから、叫んでも問題なし!」
先週の土曜日に会ったばかりだけど、ちょうど一週間経った土曜の夜、今度は二人きりで華世と会っている。
今日はストレス発散しよう、なんて華世の提案でカラオケへと入った。
ひとしきり歌ったあと、この間の例の話を切り出すと、予想以上のリアクションで絶叫された。
「いや、かも、だからね、かも」
「かもって、だってされたんでしょ? 見てなくたってわかるでしょ、感覚で!」
「それは……まぁ。あ、でもほら、間違えたのかもしれないじゃん」
「はぁ? 馬鹿じゃないんだから、間違えるわけないでしょ、何と間違えるのよ」
「だって、そう考えるしか辻褄が合わないから……」
言っておいて、華世の指摘通りのことを自分でも思っていた。
間違えて、なんて、それはそれでまた違う意味で問題だ。
だけど、それにしたって未だにあれは何だったのかと思っている。