冷徹ドクター 秘密の独占愛


「とにかく、ないってば。だから、もう忘れることにするし」

「忘れる?! 言ったな、忘れられるのかね〜?」

「忘れます。いつまでも気にしてたら仕事にも支障が出るしね」

「まっ、沖縄ならいつでも大歓迎だから、進展あったら隠さず話すこと。わかった?」

「はいはい、わかりました。沖縄はお互い自腹で一緒に行こうね」


華麗に沖縄奢りの約束をかわすと、華世は「えぇー、何それー」と不満気な声を上げた。


忘れる、なんてきっぱり言っておきながら、そんな簡単なことじゃないのは自分が一番良くわかっていた。

だけど、口に出して宣言することで、少しでも消化できるんじゃないかと思った。

いつまでも囚われるわけにもいかない。


忘れよう。

心の中でもう一度そう唱え、汗をかいた烏龍茶のグラスを手に取った。


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