冷徹ドクター 秘密の独占愛
華世と別れて一人電車に揺られ、職場の最寄り駅で電車を下車した。
何となく夜風にあたりながら家までの道を帰りたい気分になり、駅前からぷらぷらと自宅までの道のりを歩いていく。
電車なら自宅最寄り駅まで五分しないけど、ここから歩くと三十分くらいはかかる。
それでも今日は歩いて帰りたい気分だった。
賑やかな駅前通りを抜け、飲食店が立ち並ぶ繁華街を進んでいく。
週末、土曜の夜。
酔いの回ったスーツ姿のサラリーマンや、大学生くらいの若者のグループが、あちらこちらをふわふわした足取りで歩いている。
浮かれた姿を眺めながら、人通りの多いメインストリートを一本脇道に逸れ、比較的落ち着いた道へと入る。
車が一台通れるほどの車道の左右、ハナミズキの木が並ぶ歩道がある静かな通り。
個人経営のこじんまりした居酒屋や小料理屋が軒を連ねるそこは、道行く人も少なく時間がゆっくり流れているようだった。
『千紗はさ、その副院長のこと、何とも思ってないの?』
帰り際、突拍子もなく華世がそんなことを訊いてきた。