冷徹ドクター 秘密の独占愛
初めのうちは、怖い、苦手と思う気持ちがほとんどを占めていた。
実際、どやされるのを恐れて、あまり近寄らないようにもしていたのは事実。
だけど最近は復習や自分なりに勉強をしているおかげか、まごついて苛つかせることも無くなっている。
でも、全くと言っていいほど業務外の話はしない。
朝の「おはようございます」と終わりの「お疲れ様でした」の挨拶を交わす他は、雑談すらしたことがないのだ。
だから正直、副院長のことはよくわからない。
この間の市野さんの話を聞いて少しだけ副院長の過去を知ることができたけど……。
そんなわけで、何とも思ってないのかと言われると難しい。
仕事中の様子だけを見ていて分析してみると……無口?
他人には興味なさそうだし、趣味は……やっぱり仕事?
ロクな分析しかできないな、なんて思っていた時、前方左側にあるお店の引き戸が勢いよく開き、人が一人出てくる。
「あっ……」
和花が飾られる上品な店先に現れたスーツ姿を目にして、思わず足が止まってしまった。