冷徹ドクター 秘密の独占愛


「大丈夫ですか? かなり酔ってますけど」

「ああ……大丈夫だ」

「でも、歩くのも危ない感じですし」

「大丈夫だと言ってるだろ」


そう言われても、この状態の人を前に「はい、そうですか」と言って立ち去るのも気が引ける。

どうしよう。

数秒考えた結果、私は黙って副院長の隣へと腰を下ろしていた。

その場にとどまった私を横に、副院長からは特に反応はなく、静かに酔いと戦っている。

時折吹いてくる心地いい風が、ハナミズキの薄ピンクの花を揺らしていた。


「明日が、お休みだから……飲んでたんですか?」

「……?」


しばらく続いた沈黙をそんな質問で破ると、副院長はチラリとこちらに顔を向ける。

でもすぐにお店が並ぶ正面へと向き直った。


「仕事に支障が出るから……飲まないって、ちょっと耳に挟んだので」


言ってから、こんなこと言ったら内輪で話題に出していることがバレてしまうじゃないかと思った。

失敗した、そう思っていると、小さなため息が聞こえてきた。


「たまに……全てに嫌気が差すときがある」


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