冷徹ドクター 秘密の独占愛


「え……?」


唐突に発された言葉に、返す返事がパッと出てこなかった。

何より、たった一言なのに重くて深すぎる。


『まぁ、アイツも色々あったからさ』

市野さんに聞いたあの話が頭を過ぎった。


「それは……仕事のことですか?」


訊いてもいいものなのかわからなかった。

口にしてから、野暮な質問をしている気もした。

でも、隣から「そうかもな……」と返事が返ってくる。


「継承するべきじゃない人間が、副院長なんて肩書きもらって……名ばかりで笑える」


常に自信に満ち溢れて仕事に打ち込んでいるようにしか見えなかった副院長の悲観的な部分が垣間見える。

酔っているにしても、こんなにストレートに心の内を明かされるとどうも調子が狂う。

かじる程度に事情を知ってしまっているだけに、軽はずみな言動は慎まないといけないと思った。


「私は……そんなことないと思います」


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