冷徹ドクター 秘密の独占愛
「お待たせしました〜! 浅木さんね」
「あっ、はい!」
現れたのは、スラリと背の高い年配の女性だった。
胸まである緩くウェーブする黒髪。
服装は白衣ではなく、タイの付いたベージュのブラウスに、黒い膝丈のフレアスカートという上品な格好をしている。
電話で対応をしてくれた人だとすぐにわかったけど、この医院の院長夫人だろうか。
「じゃあ、こちらへどうぞ」
「あ、はい。失礼します」
どうやら診療室を通って、面接する場所へと案内されるらしい。
緊張した足取りで呼ばれたドアへと向かう。
奥に広がった診療室を目にして、さっきの心配が確かなものになった。
ドアのすぐ先からずらりと並ぶユニット。
ざっと五台はある。
今は手前から三つのユニットに患者さんが座っていて、一番手前はドクターにアシストがついての処置中。
二番目は何かの硬化待ちだろうか、患者さんが倒れたユニットに横になっている。
そして、三番目のユニットでは衛生士が単独で歯石除去の処置を行っていた。
いやいやいやいや……無理だ。
間違いなくバリバリ系でしょ、これ。
通りすがるスーツの私に向けて、スタッフたちは「こんにちは」と患者さんにするように挨拶をしてくる。
会釈を繰り返しながら診療室を抜けていった。