冷徹ドクター 秘密の独占愛
そこにあったには、大きな花束だった。
中心には赤とピンクのガーベラがざっと見て二、三十本束ねられ、それを引き立てるようにかすみ草が周囲を飾る。
それそれは豪華な花束だ。
「送り主、あの患者さんですよ、津田さん」
「えっ!?」
そういえば、前回のブラッシング指導の最後に、いきなり好きな花を聞かれたことを思い出した。
あの時は田島先生の登場でそれどころじゃなくて、世間話の一つと思って答えたけど、まさかこんな花束が届くなんて……。
「何なんですかね、いきなり」
「あー、この間の指導の時、聞かれたんだよね……好きな花」
「え、じゃあそれでこれ送ってきたんですか?」
「わかんないけど、たぶんそうじゃないかな……担当になってるし、御礼かね?」
「だったらお菓子とかの方がいいですよね? 花送ってくる人とは初めてですよ」
「確かに……お菓子だったらみんなで頂けるもんね」
「どうしますか? これ。お家に持って帰ります?」
「んー……いや、せっかくだから受付けに飾ろうよ。その方が綺麗だしさ」
持ち帰っても独り暮らしだし、平日はほとんどの時間家にはいない。
せっかくの綺麗な花をあまり楽しめずにダメにしてしまうなら、受付けに飾って来院した患者さんたちに楽しんでもらった方が花も幸せなはずだ。
「じゃあ、花瓶に入れて飾っておきますね」
「うん、そうしよう。今日、津田さん再評価で来院の日だよね、いらしたらお礼言わないとだね」
これを飾ったら受付けが華やかになりそうだな、と思いながら、途中だった仕事をしに消毒室へと舞い戻った。