冷徹ドクター 秘密の独占愛
「どうして……」
「さっき、帰ろうと出たら、あの患者が従業員出入り口周辺で不審な行動を取っていたのを見かけて、様子を見ていた」
「え……」
「まさかとは思っていたが……見張っていて正解だったな」
津田さんが去っていった道の先を見据える律己先生の視線はいつになく鋭い。
険しい表情を見上げながら、もし律己先生が来てくれなかったら、どうなってしまってたのか考えていた。
想像しただけでも恐ろしくてゾッとしてくる。
「来院中から、お前を見る目がちょっと異常だとは思っていた」
「え……」
指名をもらって指導してきたけど、特に何か異変を感じることはなかった。
こんな風に待ち伏せされて、やっと普通じゃなかったことに気が付くなんて、私の危機管理は壊れているのだろうか。
「今日来院した時も様子がおかしかっただろ。気付かなかったのか」
「そういえば……今日は口数が少なくて、体調でも悪いのかと思ってました」
それは体調が悪かったわけではない。
贈った花が、受付けに飾られていたのを見て、気分を害したからだ。