冷徹ドクター 秘密の独占愛
「無いです! それだけは、絶対に」
こんな風に答えたら、慎との過去の関係を認めることになっちゃうけど、この際そんなのどうでもよかった。
そんな選択をするくらいなら、怯えてでも自宅に帰る手段を選ぶ。
「何かあったら、明日の予約に穴が開く。担当の患者、入っているだろ」
「はい……それは……」
仕事の話をする律己先生は、どんな時であろうとブレない。
その迫力に負けて、それ以上の言葉が出てこなくなってしまった。
「帰ってやることがある。行くぞ」
「あ、はいっ……」
戸惑う私の反応なんかお構いなしで、律己先生は駅方面へと向かって歩き出す。
その後ろを、本当にいいのだろうかと思いあぐねながら、控え目な足取りでについて行った。