冷徹ドクター 秘密の独占愛
先生のギャップに困惑しています
翌日。
更衣室で白衣へと着替えをしながら、昨日の夜のことを一人思い返していた。
色んなことが一気に起こりすぎて、とにかく濃厚な一日だった。
今朝、明るくなった広いリビングで目覚めると、ダイニングのテーブルの上に置き手紙とマンションの鍵、それからお札一枚が置いてあった。
いつもカルテ上で見ていた字で書かれた手紙には、先に病院に向かう旨と律己先生の連絡先、そして、必ずタクシーを呼んで出勤するようにと書かれていた。
病院までタクシーで1メーターもない距離なのに、昨日のことを危惧して歩いては来ないようにとわざわざ配慮してくれた。
そんな律己先生は、あの後まだ学会の資料作りが残っていると、一人部屋へと戻っていった。
あの時のことを思い出すと、今でもボッと顔が熱くなる。
抱き締められたことはもちろん驚いた。
でもそれは、単純に私を安心させるための行動だと解釈もできる。
だけどその後にされたキスは、どうしたってその解釈をするには無理がある。
雰囲気に飲まれて、つい……というやつだろうか。
そんなことを考えるうちに、以前昼休みに寝たフリをしていて起こったあの出来事を思い出したりもした。
どっちのキスも、私には全く意味がわからない。
だって、相手はあの律己先生だ。
それが未だに信じられない。