冷徹ドクター 秘密の独占愛


和食全般がいただけるその店は、釜飯が売りだというお店だった。

それを知ったら、釜飯を頼まずにはいられない。

律己先生はと言うと、金目鯛の煮付けのメニューを頼んでいた。


料理がくるまでの間は、今日来院した患者さんの話題が続いた。

時折出てくる専門用語に頭の中でハテナが浮かぶ瞬間があり、まだまだ勉強不足なのを思い知る。

疑問を残しながら返事しているのが勘付かれないかそわそわしだした時、お待ちかねのお料理が運ばれてきた。

小さな釜が目の前に置かれ、そっと木蓋を開けてみる。

瞬間、だしのいい香りと共に湯気が立ち上った。

大きなホタテが真ん中にどんと乗っていて、じいっと見つめてしまう。


「食べないのか?」

「あっ、はい、いただきます」


ぷりぷりのホタテをほぐしながら、律己先生をチラリと見ると、器用に骨を取り除いている。

その綺麗な箸さばきを見ていると、細やかで丁寧ないつもの治療が思い出された。

< 174 / 278 >

この作品をシェア

pagetop