冷徹ドクター 秘密の独占愛
「大丈夫か?」
いやいや、先生こそ大丈夫ですか?!
「だ、大丈夫です……でも、あの、それは……」
続く『どういうことでしょうか?』が出てこない。
不自然に箸を宙に浮かせたまま固まっている私を、律己先生は箸を止めじっと正面から見つめてくる。
そして、私が何を言いたいのかを悟ったように微笑を浮かべた。
「ただの従業員に目を掛けるほど、俺がお人好しに見えるか?」
「えっ……」
人に好意を伝えることを、こんなにスッキリ言ってしまうことに驚愕した。
少しは恥じらいだとか、緊張感だとか、そういう類のものを身に纏うのが普通だと思う。
だけど、律己先生にはそれがまるでない。
逆に言われた私の方が告白でもしたようにドキドキしてしまっている。
そこからは、釜飯の味はよくわからなくなってしまった。
口の中が急に乾いたようになって、出てきていたお茶をしきりに口にしていた。