冷徹ドクター 秘密の独占愛
「さっきの……ことなんですが」
背後でドアが閉まる音を聞きながら、慎重に言葉を選ぶ。
モヤモヤしているくせに、何をどう言えばいいのかわからない。
好きだなんて言いましたけど、それは恋愛感情の『好き』という意味なんですか?
そう聞けてしまえば手っ取り早い。
でも、そんな勇気があるはずもなく、声を掛けておきながら黙り込む。
私のせいで二人して靴を履いたまま玄関で立ち尽くす。
律己先生は持ってくれていた私の荷物を静かに隅に置いた。
「さっきのこととは、好きだと言ったことか」
なかなか続きを出さない私の心情を察したのか、律己先生はエスパーのように切り出せなかった私の言葉を言い当てる。
おずおずと顔を上げると、律己先生の真剣な目が私を見据えていた。
「あの、でも、私……ダメダメだし、律己先生が思うような――」
「俺の気持ちが迷惑か?」
食い気味に返された声に目がさめるような感覚を覚える。
驚くほど反射的に「違います」と即答していた。