冷徹ドクター 秘密の独占愛
「迷惑とか、そういうことではなくて――」
「だったら、お前には俺を好きになってもらう」
「え……」
あからさまに驚いた表情になってしまった私に向かって、挑戦的な意地悪ぽい笑みを浮かべる律己先生。
今まで律己先生のそんな表情見たこともなくて、 さっきからずっと忙しなくしている心拍がますます上がってしまう。
「あ、あの」と思いっきり動揺した声を発する私に、律己先生はそっと手を伸ばす。
近付いた右手は、私の頬に優しく触れた。
「衛生士じゃない浅木を見てみたい」
その言葉の破壊力に、それまでうじうじ考えていたことが全部すっ飛んでしまったように何も考えられなくなった。
いつの間にか穏やかな笑みへと変化した律己先生の表情は、私が保っていた距離を壊していく。
「それなら……私だって……」
職場のドクター、副院長という存在。
それだけじゃなく、律己先生には他の先生たちと違ってより高い壁を感じてきた。
仕事をしている姿しか知らないし、先生じゃない律己先生は想像もつかない。
踏み込んではいけないと、思っていた。
踏み込まれたくなくて、自ら一定の距離を保っているのだと思っていた。
でも、それが違うのなら……。
もう少し近付いても、いいのなら……。
「先生じゃない律己先生のこと……知りたいです」