冷徹ドクター 秘密の独占愛
書き終えたカルテを手に、受付けへと去っていく律己先生。
立ち去ったサイドテーブルの上には、半分に折られた指示を書いたメモが残されていた。
グローブを外しながらメモを手に取る。
開いた紙には、指示された部位の歯式が書かれてある。
そして、その下に書いてある文字に釘付けになってしまった。
【出る時に連絡する。今日は買い物して帰るか?】
仕事の指示と一緒に書かれた、個人的内容の伝言。
見た瞬間、ドキッと心臓が音を立てていた。
挙動不振に周囲を確認してしまう。
見たメモを勢いでエプロンのポケットに突っ込んでしまったけれど、見たはずの歯式をすっかり忘れて再びこっそりメモを見返した。
「では、拝見しますね。開いてください」
患者さんの口の中をチェックしながら、何を買い物して何を作ろうかと、そればかり考えていた。