冷徹ドクター 秘密の独占愛



夕方の混み合う時間が過ぎたスーパーは、品物を見るにはちょうどいい人の入りだった。

並んで入った入り口で買い物カゴを手に取ると、律己先生が黙って私の手からカゴを受け取る。

「あ、すみません」と自然と出てきた言葉に、律己先生は仄かに口元に笑みを浮かべた。


入ってすぐの青果コーナーを歩きながら、ふと横にいる律己先生を見上げる。

私の視線をすぐさまキャッチした律己先生は「どうした?」と不思議そうな顔をした。


「あ、いえ。何か、変な感じがして。律己先生とスーパーとか」

「そうか?」

「先生が買い物カゴ持ってるのとか、何か違和感あります。あ、悪い意味じゃないですよ?」


慌てて弁解した私に、律己先生はフッと気の抜けたような笑みを見せる。


「違和感って、あんまりいい意味では使わないよな」

「そんなことないですよ! 少なくとも、今のはいい意味で使ったんです」


こんな風に笑ってくれるなんて、少しは私に気を許してくれているのだろうか?


ネットに入った玉ねぎを品定めしながら、何だか嬉しさが込み上げていた。

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