冷徹ドクター 秘密の独占愛
嫉妬に狂う冷血ドクター
「浅木さん、ちょっとちょっと!」
週の後半、木曜日。
午前の患者さんラッシュが過ぎた十一時前。
外注している技工所から届いた技工物を診療室の引き出しに整理してしまっていると、バタバタと足音を立てて院長が診療室に入ってきた。
来るなり、私の名を呼んで慌てた様子で近付いてくる院長に、何事かと手を止める。
「どうかされましたか?」
「いやぁ、参ったよ」
そう言う院長の手には、A4サイズの封筒がある。
下部には律己先生が協力医として週一で行っている大学病院の名前が印字されている。
「これ、今日、律己先生に持って行ってもらうはずだった診療提供書なんだけど、私うっかりして渡しそびれてたんだよ」
「え……そうなんですか」
「カルテと一緒にしておくって言ったのに、うっかりしてた」
院長はかなり焦った様子で苦い顔をしている。
その顔をじっと見つめていると、院長は私にその封筒を差し出した。
「浅木さん、今から届けてくれないかな」