冷徹ドクター 秘密の独占愛
「えっ、私がですか?!」
「この後、浅木さんの予約は入ってないよね?」
「あ、はい……」
院長はホッとしたようににこりと笑って、再び封筒を私へと押し出す。
話の流れに任せて、無意識にそれを受け取ってしまっていた。
「今日は午前中、谷口さんもいるし、診療室のことは気にしなくていいから」
「はぁ……」
「私は今から歯科医師会に行かなくちゃいけないから、頼んだよ」
院長、暇そうだし、院長が行けばいいのに、なんて思っていたら、どうやらこれからお出かけらしい。
「場所は、わかるよね?」
「はい、ここから二駅でしたっけ?」
「そうそう。駅前から病院に行くバスが出てるから、それに乗って。今日の交通費はお給料に入れておくから」
院長は「じゃ、よろしくね」と言って、今入ってきた診療室奥の扉を出ていった。