冷徹ドクター 秘密の独占愛
「でも……今日は仕事に行くのが惜しいな」
「えっ……」
「ずっとこうしてたい」
あの、無表情で怖くて、仕事に一切妥協しない厳しい律己先生が、私を抱き締めて仕事に行くのが惜しいなんて言うことが、関係が進展した今でも何だか信じられない。
出会った頃のことを思い出すと、全く想像もつかないし、別人かと疑うくらいギャップがありすぎる。
だからこそ、こんな風に言われてしまうと心臓が壊れそうに高鳴ってしまう。
「そんなこと言われたら……心臓がもちません」
腕の中でボソッと呟いた私を、律己先生はクスッと笑う。
その言葉通り、律己先生は私を抱き締めたまましばらく動かなかった。
温かい体温に包まれながら、部屋の中に差し込み始めた朝日を穏やかな気持ちで見つめていた。