冷徹ドクター 秘密の独占愛
「ごめんなさい……本当に、ごめんなさい」
そっと、壊れ物を扱うように、ガーゼにテーピングがされた律己先生の右手に触れる。
また、後悔が私を襲う。
昨日、あんなことがなければ、律己先生はいつもと変わらぬ今日を迎えられた。
あんなことがなければ、この手が今日も患者さんを診ることができたのに……。
「大したことないと言っただろ。すぐに診療にも出れるようになる」
「でも、こんな――」
「でもも何もない」
私の声を遮り、律己先生は再び私を腕の中に閉じ込める。
私を守ってくれた右手が、髪をふわりと撫でた。
「実家に帰ると聞いた。何かあったのか?」
頭の上から降ってきた質問に、ピクッと体が震えてしまった。
顔を見られていないことを幸いに、「はい」と落ち着いた声で答える。
「母が……体調を壊したようで。様子を見に行きます」