冷徹ドクター 秘密の独占愛
「お、おはようございます。先生、驚かせないでくださいよ……びっくりした」
「あー、ごめんごめん」
ニカッと笑って頭をかく鮎川先生は、この四月からここの常勤になったばかりという私と同じく新参者のドクター。
それまでは大学に残って小児歯科のドクターをしていたらしい。
私の一つ歳上だという鮎川先生は、取っつきやすいノリのいい先生。
患者さんにもスタッフにもフレンドリーな応対で、親しみやすい雰囲気だ。
診療室で白衣の姿だから先生に見えるけど、外で私服の姿になったら大学生にでも見えてしまいそうな、ちょっと少年ぽい人だ。
「何、浅木ちゃん、副院長にびびってんの?」
「びびってますよ……鬼だって聞いたんで」
「鬼だよ、鬼ー。あー、俺も昨日診た患者のことでまた怒られるわー」
昨日の仕事後、助手のみんなに聞いた話では、副院長は先生たちにもかなりきついお叱りをしたりするという話を耳にした。
自分の不在だった日に来院した患者さんのカルテを全てチェックし、何か問題があれば診た先生にダメ出しをしたりするらしい。
鮎川先生はそれを言っているのだろう。