冷徹ドクター 秘密の独占愛



翌日の診療終了後――。


他の先生やスタッフの皆が病院を出てから、私は一人、診療室でレジン充填の準備をしていた。

一通り準備を終えた時、診療室に白衣を着たままの律己先生が入ってくる。

箱からグローブを一組取り出すと、準備をした消毒室から一番近い三番ユニットまでやってきた。


「始めるか」

「あ、はい。お願いします。でも先生、一人でやりにくくないですか? サクションとか」

「ああ、問題ない」


エアータービンなどの切削器具を使う治療には、普段はアシストが口腔内を吸引する。

でも、今は私が横になってしまうわけで、律己先生が同時にその両方をしなくてはならないのだ。


「では、すみません、お願いします」


いつも患者さんが横になるユニットに腰を掛ける。

「倒すぞ」と言われて、再び無駄に緊張に包まれた。

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