冷徹ドクター 秘密の独占愛
「すみません……私の、勉強不足です」
「勉強不足……まるで学生レベルだな」
容赦ない言葉は遠慮を知らない。
「いや、実習生でも動ける指示か」なんて付け加えると、また誌面へと目を落としてしまった。
「すみません……」
謝っても無意味なような空気が流れる中、冷静にこの状況を観察する自分がいる。
こんな風にきつい言葉を浴びせられたら、やっていけないと潰れてしまうのも無理ない。
メンタルが弱ければ到底耐えられないだろう。
何人ものスタッフが辞めていった原因を身を以て体験しながら、なぜか他人事のようにそんなことを黙考していた。
まるで私が空気に溶け込んでしまったかように、副院長はもうこっちを見向きもしない。
しんとした医局には、診療室からするタービンの音だけが聞こえていた。
「あの……今後、このようなことがないようにします……本当に、申し訳ありませんでした」
この状況で許しを請うつもりはない。
だけど、自分の非を認めて、誠意を持って謝る。
最低限それはしないといけないと思い、最後に深く頭を下げた。
「失礼しました」
「最初に言っておく」
頭を上げてドアに向かった時だった。
背中に冷えた声が突き刺さる。
恐る恐る振り返ると、端正な顔が無表情にこっちを真っ直ぐ見据えていた。
「俺のアシストが出来ないないなら、今すぐ辞めろ」
「……」
「出来ない人間は必要ない。それだけだ」
冷たく放たれた言葉は、何とか修復した私の心をまたボキッと鈍い音を立ててへし折る。
やっぱり、お先真っ暗かもしれない。
医局の扉を後にしながら、息苦しさに胸を押さえていた。