冷徹ドクター 秘密の独占愛
「ありがとうございます……」
シートベルトを外す副院長に一言お礼を口にしてみたものの、それに対してうんともすんとも反応はない。
先に車から降りていく姿に、慌てて助手席のドアを開いた。
副院長はトランクにしまった荷物を取り出すと、一人両手に持って串田さん宅の門へと向かっていく。
「あっ、私も持ちます!」
車から飛び出してきた私をチラリと見るなり、副院長は「呼び出し」と顎でインターフォンを示す。
往診に出てから初めて発された声に、「はい!」と思わず声がでかくなってしまった。
すかさずインターフォンを鳴らし、横に立った副院長を盗み見る。
ポータブルエンジンや診察器具、各種材料が入ったかなり重量のある往診セット。
工具箱?とも言える一メートル近くある主の荷物が入るボックスと、その三分のニほどのサイズのボックス計二つ。
私が両手に持つと若干ふらつくくらい重いけど、それを何ともなさそうに涼しい顔で持っている。