冷徹ドクター 秘密の独占愛
次、早いとこ決めないとな……。
路頭に迷うわけにはいけないし。
「この度は、お悔やみ申し上げます」
「お忙しい中、ありがとうございます」
篠田さんの挨拶であっ、と自分の世界から舞い戻る。
ついぼうっとしていた間に、弔問客が訪れていたらしい。
そこに立っていたのは、私たちよりも頭一つ以上は背が高い、スラッとしたスタイルのいい男性が一人。
礼服の黒いスーツがよく似合うその背格好に、何気なく顔を仰ぎ見る。
見上げた先にあった整った顔にハッと息を呑んでいた。
奥二重の意思強そうな目。
すっと通った鼻筋に、薄い唇。
六四分けした暗めのアッシュグレーの髪はサラリと綺麗で清潔感がある。
篠田さんに香典袋を差し出すと、腰を折って芳名帳にさらさらと記入をしていく。
その手元に釘付けになっているところ、私の前にも弔問客が訪れた。
「ちょっと見た、さっきのイケメン。院長あんな知り合いいたの?」
篠田さんも同じ感想だったらしく、手が空いた隙にそんなことを口走った。