冷徹ドクター 秘密の独占愛
そのペンが、なぜ今、ここにあるのか。
失くしてしまったはずなのに、副院長が持っているのか。
全く繋がっていかない。
歯ブラシのチャームが揺れるボールペンを、まじまじと見つめる。
「学生の分際であんな無責任なことをして、よく国家試験を受けさせてもらえたな」
「え……?」
ちょっと待って。
頭の整理がつかないまま、突き付けられたボールペンを手にする。
その先の話を求めるように目の前の顔を見上げた私に、副院長は表情一つ変えようとしない。
むしろ、見下ろす視線は厳しいものへと変わっていった。
「いい加減な奴とは、仕事をする気はない。よく覚えておけ」
バッサリと切り落とすような言葉を吐き、呆然と立ち尽くす私を避けるようにして玄関へと向かっていった。