冷徹ドクター 秘密の独占愛



「んー……イマイチだなぁ……」


赤ペンを手に、求人雑誌や広告を眺めながら一人唸る。


四月半ばというこの時期、新年度を過ぎると求人率は普段よりも落ちる。

三月で卒業した新卒の衛生士が就職を決めた後ということもあり、出ている求人はどれも外れのものばかりに見えてきてしまう。

昨日は母校にきている求人を見せてもらいに行ってきたけど、やっぱりピンとくる求人は見つけられなかった。


篠田さんも言っていたけど、私も希望は緩く診療をしている病院だ。

院長が一人でやっている病院。
この際、年配じゃなくてもいい。

診療内容は一般歯科、小児歯科で、口腔外科をバリバリやっているようなところはできれば避けたい。

休みは週休二日はやっぱり欲しい。
出来れば福利厚生も充実していて、給料も……。

なんて、そんな贅沢なことばかり思っているから見つからないのだけど。


とにかく、私には悠長に選り好みしている時間はない。

山梨にある実家を出て独り暮らしを始めたのは六年前のこと。

毎月の家賃や光熱費だって最低払わなくてはいけないし、のらりくらりしていたら実家に舞い戻るしかなくなる。

それは最悪回避したい。


もう何度も眺めている雑誌をパラパラとめくりながら、いよいよ飽きてきた頃、紙がくっ付いて開いていなかったページに気付く。

様々な業種の求人が誌面でアピールしている中に、急募!と大きく書かれた歯科衛生士の求人が一つ載っていた。


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