冷徹ドクター 秘密の独占愛
会いたくなかった人との再会
「デンタル撮りまーす、左上六番」
「根充(こんじゅう)します、垂直で準備お願い」
週の始まりの月曜日は、朝からユニットフル回転で診療室は慌ただしい。
一番のユニットには副院長がExt(エキスト)をする患者さんが浸麻(しんま)を終え横になっていて、三番のユニットからは鮎川先生が診る患者さんがレントゲンを撮るために立ち上がる。
四番のユニットでは、今から牧先生が根管充填を始めるところだ。
「麻酔してから、ご気分大丈夫ですか?」
浸麻が効くのを待つ一番ユニットに掛ける患者さんに声を掛ける。
「はい」と答えた患者さんは、ユニットテーブルに置かれた外科器具を眺めて少し不安そうに表情を強張らせていた。
「もう少々お待ちくださいね」
「あの……」
「あ、はい」
控え目な声で患者さんが私を引き止める。
麻酔が効いてきたであろう口元を押さえるのは、五十代の女性の患者さん。
今日は保存不可能になった臼歯部(きゅうしぶ)を抜歯する。