西城家の花
夜空に大輪の花を
*話の都合上、『恋文を送りましょう』は作者の勝手な都合で削除さて頂きました。続きを待ってくださった読者の皆様、本当に申し訳ありません
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「生地は紺色で、出来るだけ艶っぽいのがいいわ。あと、帯は黒いものが欲しいわ」
「かしこまりました、お嬢様」
畳いっぱいに広げられた浴衣の中から美桜の要望通りの浴衣と帯を選び抜いた美桜の従者はそれを美桜の前に広げて見せた
紫の桔梗の花があしらわれている紺の浴衣とシックな黒い帯で着つけた自分の姿を思い浮かべた美桜は大きく頷く
「それにしましょう。さぁ、早く着替えないと。約束の時間までに間に合わないわ」
「はい」
身に着けていた着物を脱いで、先ほど選んでもらった紺色の浴衣に身を包んだ美桜は従者に帯を結んでもらいながら自身の姿を映し鏡で見る
普段着慣れない色の浴衣は恐ろしいほど美桜には似合ってるように見えなくて一瞬絶望しかけたが、髪を高く結えばそれっぽくなるかもしれないと淡い期待を胸にした美桜はホッと安堵する
本日、大志が毎年西城家の屋敷の付近で開催される花火大会に誘われた美桜は朝から張り切ってその準備をしていた
「どうかしら?わたし、大人っぽく見える?幼く見えないわよね」
「大丈夫です、お嬢様。お嬢様は十分に可愛らしいです」
「可愛らしいじゃダメなのです!!」
不安げに自身の姿を見つめる美桜に、美桜の長く艶やかな黒髪を櫛で梳かしている従者は首を傾げさせた
「可愛らしいじゃ駄目なのですか?」
「駄目なのです!!」
ぶーっと頬を大きく膨らませる美桜はやっぱり可愛らしいと従者はクスリと笑ってしまった