西城家の花
美桜の上の兄、健が言っているのは美桜が毎年花火大会で着る真っ赤な金魚が描かれている白い浴衣で、同じく真っ赤な帯をリボンのように結び、金魚の巾着を持つのが美桜の夏の定番スタイルだった
そんな恰好、今時小学生でもやらない恐れがあるのに、もう高校生の美桜が着るわけにはいかないのだ
しかし去年の美桜はその恰好で花火大会を満喫したというのは言うまでもなかった
「子供っぽいだと?馬鹿言え、子供が子供らしい恰好をして何が悪いんだ」
「わたし、もう17歳です!!立派な大人な女性ですわ!!」
「大人な女性ねぇ…」
美桜の姿を上から下まで隅々まで見回した健はあまりにも妹がその言葉に不釣り合いでプッと笑ってしまった
「ひ、酷いですわ!!お兄様!!」
健の失礼な態度に涙目で耳まで顔を真っ赤に染めた美桜が激昂すると、今度は廊下の方から誰かが近づいてくる足音が聞こえてきた
「美桜の声が聞こえてきたから来てみたら、やっぱりここにいた。健兄さん」
「康、いいところに来たな。ちょっと美桜の格好を見てみなさい」
自室にいるはずだった健が少し目を離したすきにいなくなったので、屋敷中を探し回っていた美桜の二番目の兄、康は健に言われるまま美桜の格好を見て、思わず笑ってしまった
実に見目麗しい妹、美桜が息を荒くして健を睨んでいるのだが、問題なのはそこではなく彼女が身に包んでいる紺色の浴衣だった
「し、康お兄様まで…」
「すまない、美桜。しかしその浴衣はあまり君には似合っていないようだ」
「やはり康もそう思うか。わたしも我が愚妹に紺はまだ早すぎると考えていたのだ。というか美桜ごときが紺を身に着けるなど百万年早い」
二人の兄たちによるあまりにもひどいダメ出しに思わず泣き出しそうになってしまった美桜は頭を強く振りしっかり自分を保つ