西城家の花





「で、でもわたしもいい加減このような落ち着いた色が似あう淑女に…」





「どうせ俗物の雑誌に載っていたことを鵜吞みにしたんだろう。いいか、あれは世間的に平均的女性が対象であって、平均よりも15㎝も背が低く、童顔の貴様はその対象に当てはまらないのだ」





「今のままじゃ、浴衣に着せられてる感が強いから、お世辞にも似合ってるとは言い難いしねー」






美桜が負けじと反論するも、兄たちにダブル論破され、助けを求めるように結衣に視線を向けると、結衣はこほんと咳ばらいをする






「健坊ちゃま、康坊ちゃま。お二人して、美桜お嬢様をいじめるのはおやめください。二人でよってたかって可哀そうではありませんか」






今にも泣き出しそうな美桜の頭を撫でると、美桜は結衣の名前を小さく呟きながらぎゅーっと抱きついてきた





目に入れても痛くないほど可愛い美桜に抱きつかれる幸せを噛み締めていると、健がじとーと結衣と美桜を面白くなさげに見上げてきた






「それでは結衣、お前は美桜がこのまま不格好な状態で西城の大熊のところに赴き、恥をかかせても良いということなのか?」





「そうではありませんが、もっと言葉をお選びになってくださいと申し上げているのです」





「はっ、そんな必要どこにある。美桜はわたしの妹だ、妹に気を使ってどうするというのだ。それとも結衣よ、貴様は身を弁えずにこのわたしに命令をしているつもりなのか?」





「そ、そういうわけでは…」






雇い主の流水家の長男である健にぎろりと睨まれ、所詮は一人の使用人である結衣は主人である美桜を庇うためとはいえ出過ぎた真似をしたことに今更ながら気づき、顔を真っ青にさせた





そんな結衣を庇うように、美桜は小さな体をめいっぱい大きく広げさせ、健の前に出る






「結衣をいじめないでくださいまし!!もう着替えればいいんでしょう!?あっち行ってよ!!」






女としてのプライドをずだぼろにされた挙句、自分の従者にも横暴な態度を取る兄に我慢できず、美桜は健と康を隣の部屋に押し込み、襖を閉めた






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