西城家の花
そもそも何故、西城の大熊である大志が、歩く才色兼備とまで称された絶世の美少女である美桜と縁談が結ばれたのかというと、事の発端は一年前の美桜の16歳の誕生日からである
一般的に16歳といえば、法律的に女性が男性と婚姻が結べる歳であり、美桜も例外ではない
本人はまったく自覚はないが、仮にもお嫁さんにしたい令嬢ナンバーワンの美桜の元に縁談の申し込みの山が送られてくるのは当然のことで、流水の屋敷は美桜の縁談相手の写真で溢れかえっていた
色々事情があり、数年前に昔馴染みの婚約者との縁談が解消され、フリーとなった美桜を手に入れようと各々が躍起になり、それは日々エスカレートしていった
毎日のように送られてくる大量の写真、少しでも美桜に気に入られようと贈り物と共に送られてくるのも珍しくはなかった
中には強行突破で屋敷まで勝手に来て、無理やり縁談を進めようとする輩が現れる始末で美桜を不埒な輩から守るために流水にいる全ての人間が気を張らなければいけない毎日だった
それでも日々持ち掛けられてくる縁談の話に頭が痛くなった流水家当主、宏昌は苦渋の決断をした
とりあえず、どこかの縁談と話を進め、美桜に新たな婚約者を見繕うということに
正直まったく気乗りしないが、このままだと最悪な事態を招くかもしれないと、流水家一同泣く泣くその案に賛同した
というかせざるおえなかった、それぐらい切羽詰まっていたのだ
そうと決まれば相手を選ぶだけなのだが、なにせ量が多い、多すぎる
毎日のように送られてくる縁談相手の写真とその家柄を確認するだけでも途方もないというのに、その中から一人だけを選ぶというのは至難の業
今の状況を打破したいのは勿論、美桜の今後の幸せを第一に願っている流水一家は頭を悩ませた
そんな中、事の中心人物である美桜から提案、というかお願いされたのだ
『一度でいいから、西城家の大志様をこの目で拝見したいのです』と
その手にしっかりと西城大志の見合い写真を握りしめながら