西城家の花
「あんた、こんなとこでいったい何してるのよ!!なんで部屋で大人しくなって待ってないの!?」
「剣の稽古は毎日の日課であることは姉上もご存じのはずです」
「知ってるわよ!!そんなの17年間、あんたの姉をやっていたら普通に存じ上げてるわよ!!」
「だったら何も問題がないはず、何をそんなにいきり立っておられますか」
「大問題よ!!なんでこんな日まで稽古をしてるのかと聞いているの!!あんた、人の話聞いてた!?」
「…?」
いったい何の話だと太い首を傾げる弟に対し、満は立派な筋肉で纏われた体をこれでもかっていう力で叩いた
「お前!!この阿呆!!今日は流水のご令嬢があんたに会いに来るんでしょうか!!そのおかげでここ近日、屋敷が大騒ぎだったでしょうが!!」
何度も怒り任せに大志の体を叩いているが、さすが毎日あらゆる武道の稽古をこなしてきた体、まったく効いていない
大志は涼しい顔、ていうかあほ面してるっていうのに、攻撃している満の手のほうが赤くなってきた
これ以上この筋肉バカに攻撃しても自分の手が痛くなるだけだと気づいた満は弟の体から手を放し、ゆっくり息を吸って自分を落ち着かせた
「いいですか、大志。今日はあなただけではなく、西城家にとってもものすごく大事な日なのです。だから出来るだけ今日は大人しくしてほしいとあれだけ…」
ぐぅぅぅぅ
ものすごく真面目な話をしているというのに、それはどこぞの馬鹿の腹の虫によって遮られた
腹の虫の所有者をぎろりと睨むと、あっけらかんとした表情で自分の腹をさすっていた
「稽古して腹が空いたので、飯でも食ってきます」
「待ちなさい大志!!食事ならご令嬢がお見えになったときに用意しております!!だから今はせめてその汗臭い体を流し、母と姉が必死に探しぬいた背広に着替えてきてください!!」
今にも厨房へ突撃しそうな弟の下履きの上の部分を必死に掴んだが、一般的女性の筋力しか持ち合わせていない満の力では大熊と評される巨体の持ち主である大志の歩みを止めることなど出来ず、ずるずると引きずられる形となってしまった