西城家の花
とりあえず腹を満たそうと、幸いにもコンビニが近くにあり、食べるものを買いに行くと中に入っていった大志は、美桜にとっては初めてのあるものを手にして戻ってきた
そして、そのあるものの一つを美桜に手渡すと、大志は自分の手に残ったもう一つに齧り付いた
よほど腹が減っていたのか、それとも大志にとって小さすぎたのか、それは瞬く間に大志の手からなくなっていった
一方美桜は、初めて目にする白くて、ふわふわで温かい謎の丸い物体を不思議そうに眺めていた
…これはいったい、なんでしょうか?
そもそもコンビニというところにも生まれてから一度も行ったことなかった美桜があんまんという食べ物の存在を知っているはずもなく、手のひらの上に置かれた丸い存在をただひたすら眺めていると、とっくの昔に自分のものを食べ終えていた大志がそわそわし始めた
「…もしかして、甘いものはお嫌いで?」
「え、あ、いえ!大好きです、甘いもの!!」
ひたすら手のひらにあるものに釘付けになっていた美桜は、今自分は大志の隣にいることをすっかり忘れていた
どうやらこの丸い白いものは甘いものらしいとわかった美桜は、湯気が立ち込めているそれを恐る恐る口に含んだ
最初の数口はふわふわとしたほんのり甘い生地しか口に出来なかったが、徐々に食べ進めていると美桜も慣れ親しんで食べるあるものの甘さが口の中に広がった
「…あんこ。あんこですわ!!大志様!!」
「あぁ、それはあんまんだから、あんこが入っているのは当たり前で…………、もしかして初めて食べたのか?」
美桜の反応に違和感を感じた大志はまさかと思い尋ねると、美桜は満面の笑みで答えた
「まぁ、あんまんと言うのですね。わたし、初めて食べました」
にこにことした笑顔でそう答えた美桜に大志はあちゃーと額に手を当てたが、笑顔であんまんをほおばる美桜の姿を見て、何故だが胸が穏やかになっていく