西城家の花






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その日から美桜は毎日のように大志のもとへと訪れていった






最初のころは美桜が大志を訪ねてくるたびに二人の周りに人だかりが出来るほどだったが、徐々に慣れてきたのか数日経つと美桜の存在に誰も疑問を持たなくなっていた





それどころかあんな美少女が毎日拝めるということで学校内での大志の株がグングンと上がっていた





そして本日も大志に会いに美桜が校門で彼が通るのを待っていると、学校の敷地内から美桜を呼ぶ声が聞こえてきたのでそちらに振り向くと、最近親しくなった人物が大きく手を振りながらこちらに向かって走ってくる






「遠藤様!」





「やぁ、美桜ちゃん。今日も大変美しいですな」






遠藤と呼ばれた男は走ってきたせいもあるが肩で息しながら美桜に挨拶をした





遠藤は大志の級友であり、その中でも特に仲がいいということはここ数日のことで美桜は気づいていた





確か下の名前は『敦司』と大志に呼ばれていたような…と記憶を遡っていると、敦司の驚いたような声が耳に入った






「美桜ちゃん、それ…」






敦司の視線がやや下に向かっていることに気づいた美桜は微笑みながら






「大志様への差し入れですわ」






何段あるかわからないお重を包んだ風呂敷を持ち上げて見せた







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