西城家の花
「うわぁ…結構重いね、これ」
「無理をなさらず遠藤様。わたし、自分で持てますから…」
「いや、俺が持つと言ったのだから、最後まで責任をもって持たせてもらいます!」
そう言って風呂敷を抱えて歩く敦司に連れてこられたのは敷地内の道場だった
ここ数日、美桜が訪ねてくるということで様々な部活からのお誘いを断ってきた大志であったが、どうしても今日助っ人に来てくれと柔道部の先輩方に頼み込まれてしまったらしく、校門で待っているであろう美桜のお迎えを友人の敦司に頼んだという
自分のせいで大志に迷惑をかけてしまったと罪悪感を抱いた美桜であったが、道場から聞こえてくる愛しの人の雄々しい雄たけびに足を弾ませていた
見合いの日に見た大志の稽古姿は実に素晴らしいものだった
あのような姿がまた拝見できるという嬉しさで瞳を爛々とさせながら道場の入り口から室内を見渡した
さすが柔道部の道場というだけあって道着を着た屈強な男たちが溢れかえっていた
もちろん彼らの鍛え上げられた筋肉も美桜にとっては目の保養だったが、お目当ての相手を探るべくそれらには目もくれずきょろきょろと視線を動かしていると、道場の一角から歓声のようなものが聞こえてきた
もしやと思いそちらに目を向けると、そこには組み合っている二人の男がいて、片方の男は美桜が探し求めていた想い人であった
…大志様!!
すぐにでも名前を呼びたかったが、殿方の勝負に茶々を入れるなど、そんな無礼なことが出来ない美桜は黙って二人の組み合いを見ていた
それにしてもやはり大志の道着姿は何度見てもため息が漏れてしまうぐらい魅力的だ
鍛え上げられた筋肉は当然のこと、そこを伝う汗も、凛々しく吊り上げる眉も、全てが男らしい
相手の男性も立派な体格をしているが、やはり大志のほうが何十倍も逞しく見えるのは美桜が完全に大志の虜だからであるとはもういうまい