西城家の花
あぁぁぁ、大志様、今日もとっても素敵すぎる!!
「すまなかったな、敦司」
「いいって。こんな美人を迎えに行けるなんてある意味役得だし、気にするな」
まだ胸の高鳴りが収まらない間に大志が目の前まで来てしまい、どうしようかと戸惑っていた美桜はとっさに敦司が抱えている風呂敷が目に入った
「あ、あの!!」
突然声を張り上げてしまったせいで裏返ってしまったが、今はそんなことに気にする余裕もない美桜は風呂敷を指差した
「これ…大志様に…!!」
なんとかそれだけを振り絞って言うと、胸の苦しみに耐えられなかった美桜はソソと大志からの視線に逃れるように敦司の後ろへと後退った
「あ、そうそう。これ美桜ちゃんから、お前に差し入れだってー」
美桜のあからさまな異変にまったく気づいてないのか、敦司はそのまま抱えていた風呂敷を大志にと手渡した
一方大志は、一瞬動きを止めたものの、手渡された風呂敷をしっかりと両手で抱え込み、首を傾げる
「…これは?」
「その、わたし…ささやかながら大志様に…お弁当を作ってきました」
この数日で大志の食欲が人の数倍であることを知った美桜は毎日のように帰り際で何かを食べている大志の姿を見て、自分の作ったものを食べてほしいとウズウズしていた
流水のご令嬢だから米の炊き方さえも知らないだろうとよく思われるが、こう見えて美桜は幼いころから母親に花嫁修業という名目で散々しごかれてきているので家事全般は大得意である
特に料理を作ることが好きで、この間も味に煩い兄たちを黙らせたので、腕前には自信がある