西城家の花
「大志のこと、すっごい好きなんだね」
敦司の言葉に美桜は少し間を置き、恥ずかしながらもこう答えた
「はい、大好きなんです」
とっても、とっても大好きなんです
*
*
「うわぁ、すごいですね。これ全部大志さんの許嫁さんが作ったんですか」
敦司に手渡された美桜の差し入れの重箱はどの段も色鮮やかで、しかも見事に大志の好物が詰め込められていた
さすがにこの量は大志も一人では食べきれないと近くにいた柔道部の部員たちを呼んで一緒に差し入れを囲むことにした
その見事な中身に部員たちは瞳を輝かせていたが、一つそれをつまむと今度は驚きで目を見開かせた
「すごいです、大志さん!めっちゃ美味しいです!!」
「そうか、なら遠慮なく食べるといい」
大志からのお許しの言葉に少しだけ遠慮をしていた部員たちが一斉に重箱に手を伸ばし始めた
大志もたくさんあるおかずの中から卵焼きに箸を伸ばし、口に含むと驚いた
出汁がしっかりと効いた卵からほんのりと砂糖の甘みが伝わってくる
大志の好みの味付けだった
「しかし、よく出来た婚約者さんだな。将来はきっといい嫁さんになることだろう。まったく羨ましいかぎりだ」
隣からさっき大志に投げ飛ばされた柔道部主将が稲荷ずし片手ににまにまとした笑みで大志に話しかけてきた
確かに料理の腕を高く、全てのものが片手で食べられるという気遣いの細やかさも拝見できる
しかもなんといっても美桜は美しい
きっとどこに出しても恥ずかしくない嫁になるだろう
しかし大志はどこか浮かない顔をし、瞳を伏せながら、自分の婚約者の作った弁当に箸を伸ばした