西城家の花
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はぁ…大志様、いったい今ごろ何をしていらっしゃるのでしょうか
本日は日曜日のため、美桜は部屋で一人妄想にふけっていた
早く明日にならないかしら、そしたら大志様にお会いできるのに
頭の中が大志だらけの美桜は、もう大志に会いたくてウズウズしていた
もし迷惑でなければ、今日も会いに行ってしまおうかしら…
だって大志様とわたしは婚約者ですもの、姿を拝見したくて屋敷に訪れに行くのも当然のことですわ
そうと決まれば一張羅の着物に着替えようと衣類室に向かおうと部屋の襖を開けると、何故か父の姿がそこにあった
日曜のこの時間はいつも兄たちと俳句を唄い合っているはず、しかも何か様子がおかしい
いつもニコニコと笑っているはずの父の顔が暗く、酷く沈んでいるように見える
何かあったのかしらと普段と違う父の姿に不安を隠せないでいると、その暗い表情をした父が重々しく口を開いた
「…大切な話があるから、大広間まで来なさい」
父の突然の申し出に美桜はもちろん首を縦に振った
大広間に呼び出されるということはよほどの大事があった、或いは美桜が何か失態をして母親に説教されるかのどちらかだ
もちろん大志との見合いから帰ってきた日も、ひとしきり美桜が部屋で妄想をした後に母親に引っ張られ、大広間で3時間以上正座で説教をくらっていた
しかも大広間といえば流水の屋敷の中心部、美桜が説教されていたということは屋敷中筒抜けで、途中母にこっぴどく怒られている妹をからかいに来る兄たちや、ずっと正座をさせられている姉を不思議そうに見つめてくる弟が現れていたのだ
しかし説教させられているときも美桜の頭の中は大志だらけだったので、大志のことだけを考えていたら3時間なんてあっという間だった