西城家の花
しかし今回は確実に前者のほうだ
もし説教なら母が直接美桜の部屋に訪れ、そのまま引きずりながら大広間まで連れていかれるからだ
それにしても、いったい何が起こったのかと父のあとを追いながら大広間へと向かう美桜は考えた
確か華道の家元たちによる花の品評会が近々行われるはず、しかし品評会といっても中身はおじさんたちの日向ぼっこで特に心配する必要もない
もしかしたら次の作品のイメージが沸かないとかかもしれないと思ったが、もしそうだとしたら美桜よりもずっと感性が豊かな兄たちのほうに相談に行くはずだ
まったく見当がつかないまま美桜たちが大広間に着くと、そこには既に母の姿があった
まさかのお説教パターンか!?と咄嗟に身構えたが、母の雰囲気が怒ってないということを察知すると、美桜は警戒しながらも速やかに二人の前で正座をした
一瞬の間、広い大広間が沈黙に包まれたが、父の衝撃的な一言によってそれは破られた
「先ほど正式に、流水と火野の婚約が決まった」
「…………………………………………え?」
あまりにも突拍子もないことだったので美桜は自分の耳を疑った
先ほど父はなんて言った?
流水と、火野の婚約が…正式に?
だってわたしの婚約者は、西城家の大志様で…、それに火野家との婚約は既に破談になっていたはずだ
火野家は流水家に並ぶ名門華道の一族で、祖父同士が仲が良かったため、幼いころから交流はあった
しかも祖父同士が勝手に決めた流水と火野の婚姻の約束もあったのだが、数年前に火野側に問題が生じ、その話はなしとなったはずだ
そのおかげで美桜は今、大志の婚約者になったのだが、何故いきなりそんなことに、話がまったく見えない美桜が視線で父に説明を求めると、父は目を伏せながら続けた