西城家の花
「美桜が驚くのも無理はない。わたしたちもつい先日爺様から聞かされた」
爺様というのは美桜の祖父であり、流水の生ける伝説と名高い、華の名人である
祖父は現役時、様々な名誉ある賞を取り続け、ついに彼の作品は国宝級までと崇められるほどの人物で、流水家の当主が美桜の父に受け継がれた現在でも祖父に逆らえるものは流水家には誰もいない
その祖父からの命であれば、どんなことがあっても従わなければならない
でも
「…相手は誰なんですか?確か昭人様は既に火野の名から除外されたとお聞きになりましたが」
「今回は次男の与一くんらしい。美桜も昔からの顔見知りのはずだろう」
でも
「きゅ、急にそんなことを言われても困ります。それにわたしには今、大志様という新たな婚約者が…」
今回ばかりはどうしても従うわけにはいかない美桜が必死に食い下がっていると、先ほどまで黙っていた母がぽつりと言い放った
「その話は昨日、西城家の方からなかったことにしてくれとの申しを承りました」
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火野との婚約復活よりも衝撃的な内容に、美桜は頭が真っ白になった