西城家の花
どうして?
そしてすぐにたくさんの疑問で美桜の頭の中が埋め尽くされていった
この話をなかったことにしてくれってことは、婚約を破棄してくれってこと?
西城からの申し出ということは、大志本人が望んだこと?
自分は何か、大志に嫌われるようなことをしてしまったのだろうか?
それともただ単純に自分のことが気に入らなかったのだろうか?
いつから彼は自分との婚約を破棄したがっていたのだろうか?
昨日ということは、少なくとも先週の間には既に決めていたことなのかもしれない
だったら、どうして一昨日の金曜、いつものように送ってくれた時にまた来週という言葉を返してくれだのだろう
どうして、どうして
色んな気持ちが一気に押し寄せてきて、美桜は激しい不快感に見舞われた
今すぐにでも大志のもとへ駆け出して、真実を問いただしたい
しかし、既に婚約を破棄されたということは、彼とは今後まったくの赤の他人になってしまった
その事実に気付いてしまった今、美桜が両親の、祖父の命に逆らう理由などとっくになくなってしまったのだ
あぁ、大志様、大志様
涙が溢れ出ぬよう唇をしっかり噛み締め、畳に両手を揃え、美桜は両親に向かって深く頭を下げた
「…承知いたしました。そのお話、謹んでお受けさせていただきます」
美桜からの返事に両親たちは何も言わず、いつまでも顔を上げない娘をじっと見守っていた