西城家の花
「…やはり、迷惑でしたよね、興味もない女性にこんなことを告白されても…」
今にも泣きそうな震える美桜の声にハッと我に返った大志は、すぐさま否定をした
「そんなことはない。そんなことはないのだが…」
やはり美桜の言葉が信じられず、大志が言葉を詰まらせていると、美桜は不安げに首を傾げさせた
その時、何故だがふと美桜の姿が、8年前のまだ幼い少女だった彼女の姿と重なり、大志はまたあの言葉を口にしていた
「…俺が怖くないのか?」
こんなこと今さら問いかけるなど馬鹿げている、しかし聞かずにはいられなかった
すると美桜は大志の言葉にくすっと笑い、涙がうっすら見える目を細め、微笑みながら答えた
「全然、怖くありませんわ」
そしてゆっくりと自らの両手を大志の前へと差し出した
「…もし、大志様がわたしと同じように、心からわたしをお求めになってくださるのなら、どうかこの手に触れてくださいませ…」
それは8年前、少女だった美桜が泣いている大志を慰めるために咄嗟に出た行動を彷彿させる光景だった
違うことといえばただ一つ、今回は大志の意思でその手に触れるということだ
大志の心はとうの昔から美桜を想っていた
それでもやはりこんな自分が美桜を求めていいのかと、戸惑っている
不意に差し出されている美桜の手に目が行くと、その手は微かだが震えている
今までの大志なら、その震えは恐怖からくるものだと思っていたが、今は違う
美桜は緊張しているのだ、大志が自らの手を触れてくれることを、自分を求めてくれることを願いながら