西城家の花





大志はおそるおそる自らの右手を差し出されている美桜の両手へと近づかせる





本当に、この手に触れても、目の前の美桜を求めてもいいのだろうか





もし、手を握ったら、彼女は握り返してくれるだろうか





不安を胸に抱きながら、大志の指がそっと美桜の指の先に触れると、美桜の細い肩がびくっと震えた





その反応を見て、大志が思い切って美桜の片方の手を優しく握ると、伏せていた美桜の顔が上がった





美桜の顔から不安げな表情が見る見るうちに消えていき、ふわりと笑うと、両手で大きな大志の手をきゅっと握り返した






「……ずっと、大志様だけをお慕いしていたんですよ」






「…あぁ、俺もだ。ずっと、あなただけを想っていた」






8年越しの想いを口にすると、美桜は顔を真っ赤にさせて視線を泳がせていたが、相当嬉しかったのかへにゃといつもよりだいぶ締まりのない笑顔を見せた





そんな美桜を大志は愛おしそうに見つめていたのであった























*
*






「大志、大変よ!!先ほど連絡が来たのだけど、美桜様が火野家との見合いから抜け出して、こちらに向かって…」






従者から美桜が火野との見合い会場から脱走したという知らせを受け、事実確認のために急いで母屋に戻ると、同じくその知らせを美桜を西城家まで送り届けに来た流水家の従者、村本から聞かされた両親が呆然としていて





そこで満は脱走した美桜が大志に会いに来たのだと気付き、急いで大志にそのことを伝えようと、弟がいる離れの縁側に向かうと、そこには手を握りながらお互いを見つめ合う大志と美桜の姿がそこにあり、思わず目が点となった





自分が席を外していた数分間にいったい何が起こったのかと二人の周りから溢れんばかりのらぶらぶオーラに戸惑いを隠せない満であったが、大志と美桜、どちらも笑顔だからまぁいいかと考えることを放棄し、二人の雰囲気に吞まれないように少し離れたところを陣取り、新たに誕生した恋人たちに生暖かい視線を送ることにした







< 62 / 115 >

この作品をシェア

pagetop