西城家の花





後日、再び大志と美桜の婚約を結ぶために流水一家が西城家に訪れた





自分たちのほうから婚約を破棄したというのに、また縁を結んでもらえることに喜んでいた西城家一同、主に両親と姉だったのだが、目の前の状況をどのように打破するべきなのか頭を抱えていた





目の前には頭を深々と下げている流水一家の三人がいるのだが、いったいどういうことかというとどうやら今回、大志が婚約を破棄してしまったのは美桜の紛らわしい態度が原因らしく、そのことについて深くお詫びをしたいと言い出したのである





西城一家が今まで美桜が怯えていると勘違いしていた体の震え等は全て緊張と興奮によるものだと知ったとき、聖は軽く眩暈を感じた






「このたびは、本当に、うちの馬鹿娘がご迷惑をおかけしました!」





「か、顔をお上げになってください。た、確かにその、驚くこともありましたが、美桜殿がうちの大志を気に入ってるということがわかっただけで十分ですから」






西城家の当主である聖の夫、大樹は慌てた口調で流水家一同に顔を上げるように諭したが、未だに納得が出来ないのか三人は中々顔を上げようとはしなかった






「いえ、それだけならまだしも、西城様との婚約を破棄された後、元流水家当主である爺様…総一郎様の命であったとはいえ、火野と婚約を結ぼうとしてしまったこともなんとお詫びしたらよいものか…」





「…まぁ確かにそこは非常識よね…」





「満!!」






ボソッといらぬことを呟く満を叱咤した聖は穏やかな眼差しで謝り倒す悦子に視線を向けた






「ねぇ、悦子様。この間はわたしがこんな風に悦子様達に頭を下げた時、悦子様はこれから家族になるのだから気にすることないと仰ってくださいましたよね。わたしたちも同じです。それに勝手に誤解をしてしまい婚約のことをなかったことに話を進めてしまったこちらにも非があることですし、お相子です」






聖の言葉にやっと顔を上げた悦子の赤くなっていた目元が一瞬見えたが、彼女はまた頭を深く床に沈めた






「本当に、申し訳ありませんでした…。そのような優しいお言葉をいただけたことに感謝いたします」






そう言ってようやく顔を上げてくれた悦子の目元はやはり少し赤い、対して彼女の夫の宏昌はにこにこと微笑みながら、今にも崩れ落ちそうな妻の肩を抱き寄せていた






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