西城家の花





やっと少し気が休まるとホッとしたのもつかの間、土下座から姿勢を正した両親の隣にいる美桜が未だに頭を下げたままだったのだ






「あの…美桜様…?」





「美桜、顔を上げなさい」






悦子の厳しい声でも美桜が起き上がる気配がない





もしやどこか体の調子がよくないのだろうかと心配にかられると、美桜ががばっと勢いよく顔を上げ、そして






「ごめんなさい!!わたし、本当は全然おしとやかな淑女じゃないんです!!!!」






まったく予期していなかった悲痛な叫びを口にした





いったい何事かとその場にいる全員がぽかーんと口を開けたまま、美桜に注目すると、美桜は慌てて体を起こし、説明をし始める






「あの…その…皆様も子存知の通りわたくし、流水美桜はどうやら公の場では歩く才色兼備とまで噂されてるらしい評判のよい淑女だと認識されているのですが、その…実際のわたしは全然そんなことないんです!!」






今朝から美桜はいつになく緊張していた





奇跡的に想いが通じ合った大志ともう一度婚約が出来るという嬉しさはもちろんあるが、それによって美桜には西城家の皆様方に打ち明けなければいけないことがある





それは美桜が外ではかなりの猫かぶりで、素敵で完璧な流水家ご令嬢を演じているということ





西城家の皆様が今まで美桜が散々無礼なことをしてきたにも関わらずあんなにも優しくしてくださるのはきっと美桜が完璧な淑女であることを信じてしまっているから





でも、でも現実の美桜はそんなものではない





もしそのことがばれて幻滅されでもしたらと想像するだけでも怖くて、今まで大志にも言えなかったのだが、今度こそ正式に婚約が結ばれる今、彼らには知ってもらわなければならないのだ





美桜がいかに表向きのおしとやか淑女とは違う、奔放なお転婆娘であることを






< 64 / 115 >

この作品をシェア

pagetop