西城家の花





「何をぼーっとしているんですか。あなたもですよ、美桜。さっきの話、もう少し詳しく説明しなさい。もぉー、あなたって子は本当に…」






「うぅ…」






小さな呻き声を漏らした美桜は渋々と母の説教を受けることにしたのであった





見合いの席で突如説教祭りが発生してしまい、何がなんだかわからずハラハラと忙しなく視線を泳がせている満とは裏腹に聖はのんびりと混沌と化したその場を穏やかな気持ちで眺めていた





大志があんな風に声を出して笑ったのは何時ぶりになるだろうか





昔から感情を表現するのが得意な子ではなかったこともあって心配していたが、どうやらそれは必要なくなったらしい





美桜の告白で、想像とはだいぶ違う娘だということには驚いてしまったが、それでも聖は美桜に幻滅などしていなかった





むしろあのぐらい自由奔放なお転婆さんの方が少し気の抜けている大志にはお似合いなのかもしれないと嬉しくなっていた





よかった、大志が、良い人に巡り合えて





両頬を悦子に抓られながら涙目になっている美桜に視線を向けると、彼女の父親の宏昌と視線が重なる





どうやらあちらも同じことを考えていたのか、宏昌も穏やかな視線を大樹に説教を喰らっている大志に向けていたらしい





聖はこれからよろしくお願いしますという意を込め、小さく会釈をすると、宏昌はこちらこそという意味なのかお辞儀を返してきてくれた








こうして、西城の大熊と流水の花の幸せな結婚へ向けての物語が幕開けされたのであった








< 67 / 115 >

この作品をシェア

pagetop