西城家の花
いったい何事かと少しだけ前に歩み寄ると、そこには美桜とは他にもう一人、別の人物が美桜と言い争いをしていた
「迷惑とはなんだよ、迷惑とは!!僕は大志って男に用事があるんだよ。お前にとやかく言われる筋合いはない」
「大志様はわたしの婚約者様ですわ。関係ないのはあなたの方ですよ、与一。いったい何をするつもりかわからないけど、大志様の迷惑にだけはならないで頂戴!というか帰って!!」
普段自分の前で見せてくれる姿とは想像もつかないようなきつい態度に少々困惑気味の大志は美桜の怒りの矛先である男を見やった
平均的男性よりも小柄な身体で、中性的な顔立ちは大柄で、彫りの深い大志とは丸っきり正反対のタイプの男性だった
二人の言い争いに割って入ることが出来ず、その場で硬直していると、後ろからやっと大志に追いついた敦司が代わりに声を上げた
「美桜ちゃん、やっほー、今日も大変麗しく…」
敦司もいつもとは違う美桜の雰囲気に気が付いたのか動きを止めらせると、敦司の声で大志の存在に気付いた美桜は瞳を爛々と輝かせ、さっきまでの苛ついた表情とは打って変わって、満面の笑みを大志に向けた
「大志様!!」
笑顔を見せながら大志の方へと歩み寄ろうとする美桜にホッと安堵したのもつかの間、その歩みはある人物の介入によって阻まれた
「お前が、西城大志だな!!」
先ほどまで美桜と言い争いをしていた男性が大志たちに向かって吠えた
「ちょっと、与一…」
「いいか、よく聞け。西城大志!!お前は、こいつに、流水美桜に騙されてるぞ!!!」
突然の発言にその場が一瞬にして静かになった
いったいなんのことを言っているのかわからない大志に代わってまたしても敦司がよくわからない発言に対して返事をした
「あの…それはいったいどういう…」